資金余剰が市場で顕著でもなお続く日銀の緩和策

日銀の金融緩和策

資金余剰が市場で顕著でもなお続く日銀の緩和策

先日、東北地方のある金融機関の資金運用担当者からこんな話を聞いた。「日銀は被災地金融機関支援のための資金供給を4月から行っているが、実際のわれわれはカネが余って困った状況になっている。日銀が逆に、少し高い金利で、被災地金融機関支援のための資金吸収オペをやってくれるとうれしいんだけどなあ(笑)」。

 

日銀は前述のオペ以外にもさまざまな手段を使って、市場にじゃぶじゃぶに資金を供給している。日銀当座預金は3月下旬より減少して30兆円前後となっているが、これは日銀の資金供給姿勢が後退したためではない。震災後に見られた流動性不安が消え、金融機関の側か日銀からの借り入れを減らしているためである。そうはいっても、日銀当座預金は7.6兆円あれば本来足りるので、市場では強烈な資令余剰が続いている。

 

一方で、被災者には保険金が入ってきており、多くの地方金融機関で預金が増加している。被災地での復興用の資金需要はまだ顕著には出てきていない。余った資金は国債市場に流れやすいが、長期国債の利回りはすでに低水準にあり、運用難に直面している地方金融機関は多い。冒頭のコメントにあった、。被災地金融機関支援のための資金吸収オペ々待望論というジョークの背景にはそのような実情が存在している。

 

震災後の流動性不安は和らいだのだから、日銀の震災対応モードの大規模資金供給は、見直されていい時期に来ている。しかし、流れは逆である。円高抑制のための追加緩和策を日銀に望む声が財界から強まってきている。

 

とはいえ、金利を下げても金融緩和効果が高まらない局面もある。ロナルドーマッキノンースタンフォード大学教授の指摘のように、金利水準の低下によって銀行の収益が圧迫されると、彼らのリスクデータ能力は低下し、中小企業などへの貸し出しを十分に行うことができなくなる。海外の主要な中央銀行が超過準備に利息を払い、短期金利がゼロ%に下がらないようにしてきた理由の一つは、そういった弊害を避けるためである。

 

しかしながら、一段と円高が進むと、日銀は資産買取基金を現行の10兆円から15兆円に増額して、金融緩和イメージを演出しようとするだろう。その際、増額分で何を買うのか判断は非常に難しいと思われる。電力会社を除けば、社債やCPの金利は落ち着いている。J−REITは市場規模が小さく、ETFは価格変動リスクが大きい。となると国債の買い入れが中心となるが、。国債バブルを日銀があおるリスクがある。日銀にとっては悩ましい夏になりそうだ。

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